高齢者認知・運動機能障害学講座 (Department of Cognitive & Motor Aging)

超高齢社会の到来にともなって増加しつつある認知・運動機能障害医療に対する社会的要請に応えるために、当院は東北大学大学院医学系研究科と連携を結び、平成28年度より大学院連携講座を開設することとなりました。
本講座は認知機能・運動機能障害の研究・診療拠点として世界をリードするとともに、認知症・運動器疾患の研究・診療に従事する優れた専門人育成を行うことを目標としています。


背景

世界に類を見ない早さで高齢化が進んでいる本邦では、現在の認知症患者数は400万人を超え、近い将来にその数は700万人にも達すると推計されています。現在本邦の平均寿命(2013年)は男性 80.21歳、女性 86.61歳であり世界一の長寿国ですが、その一方で我が国の健康寿命(2013年)は男性が 71.19 歳、女性が 74. 21歳であり、平均寿命との間に男性で約9年、女性で約12 年の差があります。これは決して短くない期間であり、この間に多大な医療・介護コストが必要となっているのが現状です。超高齢社会の到来とともに、社会保障制度の維持が困難となりつつある本邦に於いては特に、今後の医療・介護需要の増大に対する対策が急務であると言えます。

健康寿命の延伸を阻害する要因として最も大きなものは認知機能障害と運動機能障害です。実際これまでの報告から、高齢者の要介護の原因として脳卒中(29%)、老衰(15%)、認知症(13%)、骨折・転倒(11%)、関節疾患(9%)が挙げられており、認知・運動機能障害がその要因のほとんどを占めていることが分ります。両者は互いに深く関連しており、例えば認知症の原因疾患であるアルツハイマー病、レビー小体型認知症、脳血管性認知症およびパーキンソン病などの疾患において、認知機能のみならず運動機能にも障害を来すことが知られていますし、適切な診断・治療には認知機能および運動機能に着目した多面的な病態へのアプローチが必要であることが分かってきました。

また、運動器疾患にともなう機能障害状態を表すロコモティブ・シンドローム(locomotive syndrome:運動器症候群)は大きな認知症のリスク要因であることも判明しています。つまり認知機能障害は運動機能障害合併の大きなリスク因子である一方、運動機能障害は認知機能障害の大きなリスク因子でもあることが解明されつつあると言えます。近年の神経科学や画像検査機器の進歩にともない個別の疾患に関する理解が進んできているものの、健康寿命の阻害因子として認知機能・運動機能の両面から全体像を捉える様な、総合的視点での病態生理の理解は未だに充分ではないのが現状と言えるでしょう。

当院は歴史的に、脊椎・関節などの障害にともなう運動器疾患の診断と治療について大きな成果を挙げて来ました。またパーキンソン病や筋ジストロフィー症など運動機能障害を中心とする神経筋疾患の治療・リハビリテーション・介護についても着実な実績を積んで来ました。さらに加えて、平成27年9月より厚生労働省の認定する認知症疾患医療センターとして仙台市から指定を受けることとなり、今後の地域医療圏に於ける高齢者医療の担い手として、中心的役割を果たして行くべく体制を整えてまいりました。このような背景を基盤とし、地域における認知機能障害・運動機能障害に関する診療・研究拠点を開設して基礎的な研究を進めるとともにその成果の臨床応用を進め、さらに認知症・運動器疾患医療の研究・教育・診療に関わる専門家を育成して行くに当って当院は最適な場を提供できると思われます。


高齢者認知・運動機能障害学講座の概要

認知症・運動器疾患医療においては早期発見・早期介入が極めて重要です。認知症疾患については病態に関する知見の蓄積および画像検査機器の進歩に伴い早期診断が可能となりつつありますが、多様な原因疾患によって生じる認知症の鑑別診断には高度な専門的知識が要求されることもあり、未だ専門医が充分に充足されているとは言えないのが現状です。また認知症疾患に併存する運動器疾患への分野融合的アプローチ方法は未だに確立しておらず、認知症および運動器疾患を複眼的に見渡せる融合領域での専門家養成とともに新たな治療戦略の確立も急務と考えられます。

 

以上を鑑みて本講座の目的は以下の通りとしています。また、この目的を達成するために、東北大学連携大学院講座として修士課程と博士課程を設けることとしています。


1)認知症・運動器疾患の病態解明のための基礎研究の推進
2)認知症・運動器疾患の早期診断・早期介入に関する臨床研究の推進
3)これらのプロジェクトに従事する優秀な人材の育成

 

本講座では、特に、アルツハイマー病やレビー小体型認知症、パーキンソン病などをはじめとした神経変性性認知症疾患の病態解明研究と認知症・運動器疾患の融合領域での臨床研究を推進する先端的な研究拠点の形成を目指しています。具体的には、以下の諸項目について教育活動や研究を推進し、最終的に認知・運動機能障害を持つ個々の高齢者の特性に合わせて、最適化された個別化医療プログラムを確立することを目標としたいと思います。


1)地域における保健・医療・福祉および行政関係者などとの連携による認知症・運動器疾患に対する啓発活動
2)遺伝学的解析や神経画像、神経心理、神経病理などを取り入れた認知症・運動器疾患の病態解明
3)認知症・運動器疾患患者および介護者に対する疾患教育
4)認知症・運動器疾患に対する早期診断・治療戦略の開発

 

以上の講座内容について興味のある方は是非ご連絡下さい。


担当

教授  武田 篤
准教授 古泉 豊

お問い合わせ先

独立行政法人国立病院機構 仙台西多賀病院 管理課 管理課長
TEL:022-245-2111(受付時間 平日8:30~17:15)

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